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2009.01.09 | |
リンクフリです。更新はかなり不定期です。
覚束無い意識が意識を詮索してる。次第に神経の伝達が脳に届いてくる。瞼と睫毛の重さに逆らってたら、克が隣で寝てた。
「・・・シャンプーはぁ?」
「買ってないって」もごもごとはっきり発音せずに口にしたのだけど、克にはちゃんと伝わったようだ。
「どうして?」
私の問い掛けに克はぷっと吹き出しかけたような顔と困ったような顔を混ざり合わせたような顔をしてみせた。
「・・・あ・・・・あぁ・・・・・・。・・・・ごめん・・・・・・」私は商店街のくじ引きで参加賞の白い玉が出てきたときのように力無く謝った。
「思い出した?」
「思い出した・・」
克の住んでいるマンションに着いたとき、落雷したかのような痛みのためにその場でうずくまってしまったところまで憶えてる。きっとそのまま倒れたのだろう。珍しいことじゃない。私の月のものが引き起こす痛みが激しいことは克もよく知っていて、もう最初のときみたいに慌てふためいて私が目を覚ますまで私の体を左右に揺さぶったりはしてない。
「気うしなっちゃった?」
「今まで寝てたでしょ?」
「もうやだ・・」そのまま掛け布団の中に自ら埋もれた。
「おなかどう?」克も一緒に布団にもぐって私の体を引き寄せた。
「うんー・・・違和感あるけど、まし」おでこのあたりに克の息遣いが当たるのがわかる。思ったとおり、頬に自分のより大きい手のひらが乗っている。間近に口があるのを見るのは緊張するからそのまま目を瞑っていた。唇の形は変えずに、彼の口が触れている。ほんの少しブルーベリーの実に穴があいたときに鳴るような音がちらついた。言う迄も無く、そんな音を聞いたことはない。あの実に開いている穴は何時の間に現れるのだろう?それが不思議で、ブルーベリーを育てようとしたことがあった。あの苗はもう枯れているだろう。
「服着たままじゃん」
「上着は脱いだよ」
「・・・うんー・・・」
「どうしたい?」言いながら私の頭頂部のにおいをくんくん嗅いでいる。
「服脱いで寝よ」
「いいよ」
いいよ、っていうのは口だけで、そのまま発声手段を奪われる。心の中で不当だ、と訴えを起こしているのだが、その訴えは棄却されてしまう。他ならぬ私によって。
大体1時間後、ふたりでシャワーを浴びてドラッグストアに車で向かった。夕暮れにしては暗いなぁと思いつつも、夏には夕暮れにしては明るいなぁなんて言ってる。どちらが基準なのだろう。
お目当てのシャンプーとコンディショナーの詰め替え用を購入して、そのままデパートの食料品売り場に向かった。
「ねー、ニンジン安いよ、ニンジン」特売価格という特別さがあまり感じられない日常茶飯事の価格を指差しながら、私は話しかけた。
「何にするわけ、ニンジン」克はカゴを抱えて、体を預けている私のことも半分抱えている。
「何だろう・・・何だっけ、ニンジン料理って」
克は結局ニンジンは買わずに、ピーマンと筍と牛肉を買って帰った。青椒肉絲(チンジャオロース)のつもりらしい。その他には黒い炭酸飲料や缶ビールにつまみなど、明らかに三食の食事に当てられるものとは思えない食料品ばかりだった。
買い物袋は彼に預けてそのまま駐車場に向かう。車に乗り込んで一息つく。
「帰ろうか」
その言葉にうなずく代わりにシートベルトを難なく締めて、私は今度は座席の背もたれに体を預けた。
2008.07.30 | | Comments(0) | Trackback(0) | 随想漫筆
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Author:朝暮(サグラシ)
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