覚束無い意識が意識を詮索してる。次第に神経の伝達が脳に届いてくる。瞼と睫毛の重さに逆らってたら、克が隣で寝てた。
「・・・シャンプーはぁ?」
「買ってないって」もごもごとはっきり発音せずに口にしたのだけど、克にはちゃんと伝わったようだ。
「どうして?」
私の問い掛けに克はぷっと吹き出しかけたような顔と困ったような顔を混ざり合わせたような顔をしてみせた。
「・・・あ・・・・あぁ・・・・・・。・・・・ごめん・・・・・・」私は商店街のくじ引きで参加賞の白い玉が出てきたときのように力無く謝った。
「思い出した?」
「思い出した・・」
克の住んでいるマンションに着いたとき、落雷したかのような痛みのためにその場でうずくまってしまったところまで憶えてる。きっとそのまま倒れたのだろう。珍しいことじゃない。私の月のものが引き起こす痛みが激しいことは克もよく知っていて、もう最初のときみたいに慌てふためいて私が目を覚ますまで私の体を左右に揺さぶったりはしてない。
「気うしなっちゃった?」
「今まで寝てたでしょ?」
「もうやだ・・」そのまま掛け布団の中に自ら埋もれた。
「おなかどう?」克も一緒に布団にもぐって私の体を引き寄せた。
「うんー・・・違和感あるけど、まし」おでこのあたりに克の息遣いが当たるのがわかる。思ったとおり、頬に自分のより大きい手のひらが乗っている。間近に口があるのを見るのは緊張するからそのまま目を瞑っていた。唇の形は変えずに、彼の口が触れている。ほんの少しブルーベリーの実に穴があいたときに鳴るような音がちらついた。言う迄も無く、そんな音を聞いたことはない。あの実に開いている穴は何時の間に現れるのだろう?それが不思議で、ブルーベリーを育てようとしたことがあった。あの苗はもう枯れているだろう。
「服着たままじゃん」
「上着は脱いだよ」
「・・・うんー・・・」
「どうしたい?」言いながら私の頭頂部のにおいをくんくん嗅いでいる。
「服脱いで寝よ」
「いいよ」
いいよ、っていうのは口だけで、そのまま発声手段を奪われる。心の中で不当だ、と訴えを起こしているのだが、その訴えは棄却されてしまう。他ならぬ私によって。
大体1時間後、ふたりでシャワーを浴びてドラッグストアに車で向かった。夕暮れにしては暗いなぁと思いつつも、夏には夕暮れにしては明るいなぁなんて言ってる。どちらが基準なのだろう。
お目当てのシャンプーとコンディショナーの詰め替え用を購入して、そのままデパートの食料品売り場に向かった。
「ねー、ニンジン安いよ、ニンジン」特売価格という特別さがあまり感じられない日常茶飯事の価格を指差しながら、私は話しかけた。
「何にするわけ、ニンジン」克はカゴを抱えて、体を預けている私のことも半分抱えている。
「何だろう・・・何だっけ、ニンジン料理って」
克は結局ニンジンは買わずに、ピーマンと筍と牛肉を買って帰った。青椒肉絲(チンジャオロース)のつもりらしい。その他には黒い炭酸飲料や缶ビールにつまみなど、明らかに三食の食事に当てられるものとは思えない食料品ばかりだった。
買い物袋は彼に預けてそのまま駐車場に向かう。車に乗り込んで一息つく。
「帰ろうか」
その言葉にうなずく代わりにシートベルトを難なく締めて、私は今度は座席の背もたれに体を預けた。
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2008.07.30 |
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7月書いてなかったのかーーー・・・・・・
すっかり御無沙汰
月末になって思い出したよ
2008.07.30 |
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( ゚д゚)ポカーン
として考えてみる
書きたい事を書いてみているけど
何が伝えたいのだろうと
伝えたいこととかを考えて
世の物書きさんは創作をなさっているのではないか と
しかし別段伝えたいことなどを意識してない場合は
どうなのだろう
だめってことはないと思う
まあいいか
2008.06.19 |
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「それで、どこにいくことにしよう」
話題の転換を図る彼。私も同感だった。だって、あのままのパターンでいくと、勝手に克が怒り出すんだもの。
克は感情的で情熱的だ。私は彼のそんなところが時折しみじみと羨ましい。しかしながら、そうなりたいとは思わない。単なる憧れに過ぎないのだと思う。憧れというものは、自分とは遠く隔たれた存在に対しての感情。遠くで見てきれいだと思うから憧れる。克はきれい。でも私と克は今喫茶店のテーブル板ひとつの隔たりしかない。これくらいなら近い。
「あ・・・・ハル、シャンプー買いたい。帰りに」
「え?それ俺におぼえとけっての?」
「うーん、こういうのいつも忘れちゃうから、口に出してみた」シャンプー、シャンプー、と心の中でも唱えておいた。
忘れてしまうということは、然して必要性に駆られていないということか。それほどシャンプーに飢えていない生活。うん、間違いない。まだ少し残っているし。
「帰りにドラッグストア寄って・・・それなら車で俺の買い物にも付き合ってもらっていい?食料買いたかったし」
「うん、いいよ」そう言ってから、下腹部の当たりに鉛が膨張したような圧迫感を覚えた。
「・・・今日2日目だから、あまりブラブラはできないかも」
「本当?買い物早めに済ませて俺の部屋行こうか。絶対だめってわけじゃないし・・・それとも春樹の部屋行く?」
「克のとこがいい」
「わかった」そう言いながら私の頭を撫でてから会計の紙を持って先に席を立った。
喫茶店の会計は克が出してくれた。お金は大体克が持ってくれる。学生は社会人に遠慮しなくていいと言うが、私は少し高めのレストランなどに行くと自分の食べたものは払うようにしている。奢られるということにあまり免疫がないのだ。
そう、あの合コンの日も、私が帰ろうとして誘ってくれた友達にお会計のことを訊いたら払わなくていいと言われて拍子抜けした。そんな私に克がまた話しかけた。
「聞いてない?今日は俺らが持つことになってるんだ」
「え・・・でも・・・・・・」初めて会ったひとたちに御馳走してもらうなんて、と煮え切らない逡巡を起こしていたが、克がいいからいいからといつのまにか一緒に店を出ていた。
「渡利さんとこっちの久世は知り合いだから、変なことになったりはしないよ。安心して」
「そうですか、ありがとう、御馳走様でした」
軽く会釈をしてその場を去ろうとしたら、右手を軸に体が引き戻された。多少不快に思いその起点のほうに向き直ると、神妙な面持ちをして克が口を一文字にして私の方を見ていた。
「あ・・・ごめん・・・あの・・・また会えないかな・・・」
「え?どうして?」眉を軽くしかめて即答で答えてしまった。
「こ、心石さんにまた会いたいんだ。ふふたりで」無礼にも、しどろもどろという形容はこういう場合に使うのだろうと心の中で感心してしまった。
「いつですか?」
「え?!・・・いや、いつでも」
「えっと・・・来週なら水曜の夕方からは空いてます」
「えーーっと・・・仕事がちょっといつ終わるかわからないんだ・・・連絡させてもらっていい?」
「はい。携帯教えますね。赤外線使えますか」
「ごめん、ないから教えてくれるかな、かけるよ」
こんな具合で私たちの交際は始まった。今でも私には、何をどう思って克があのとき私を引き止めたのか、上手に理解することができない。
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2008.06.19 |
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ガールフレンド
できればもうすこしきりのいいところまでいきたいです
がんばれ自分
2008.06.17 |
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季節が遡っていく頭の中で、海が干上がっていくように、その光景がビジョンになって君の中に注がれればいいのに。そうすることができたなら、あの肌を刺すような寒さも身を焦がすような鼓動も青葉の瑞々しさも枯れていく道端の草花も、あやふやなままに食い込んでいくナイフの切れ味がそんなに良くなかったことだって私は許せた。
いつもどおりの行き先。駅の近くのファーストフードのような手軽さの喫茶店。とくに目的がないままに会う約束をして、お互いの部屋がだめであるときはそこに行くことになっている。パン屋も併設されているのでそこで腹ごしらえを軽く済ませながら、その後の予定を決めたりする。
「そうやって克(かつ)はハルを好きになったんでしょ。知ってるよ。どうしても分からないけど」
隅の席でレモンティーを口に含んだ。薄い紅茶にレモンの味がきつすぎる。レモンとお湯みたいだ。
「春樹(はるき)・・・俺のこといじめたいの?」
「ちがうの?」
「こんなとこでいわなくてもいいじゃん」
「それならいいよ、もういわない」
克は重苦しい沈黙に耐えかねている様子だった。少しやさぐれ気味だったりするときにロダンの考える人のようなポーズをしながら小指の間接で眉間をぐりぐりする彼の癖を知ってる。私は先程のやり取りに関してはなんとも思ってない。なんだって克はいつも大仰に捉えすぎるし感情的になりすぎる。それで特別いいことがあるわけじゃないのにそうしたりするのはとても疑問だ。克が言うには、人間なんだから分かっててもそうなってしまうことがある、らしい。私がそれに対して、そういう状態は分かってないというのではないか、と反論したのだが、そこで克が不貞腐れてしまった。
克と行動をともにするようになったのはいつからだろう。当人は憶えてないことも、紙の上には鮮明に記憶されていたりする。克は高校生の時分からまめに日記を書くひとだったようだ。パソコンなんかはあまり得意なほうじゃなくて、ブログなんていうのが最近ははやっているのにもかかわらずアナログで日々を地道に綴る人だ。私はその中を見たことはないけれど、きっと彼らしく丁寧にその日その日が書き連ねられているのだろう。克は読書家だし、感情的だ。
克は営業の仕事をしている。社会人5年生。大学を卒業してから、難なく地元の企業に就職を決めてこつこつ働いている。少し引っ込み思案な性格だから、営業をしてると聞いたときはちょっとした驚きだった。なぜ営業を志望したのかとたずねたら、そこしか受からなかったと言うことだった。
私は京都出身の大学3年生。上京して東京の大学の理学部に通っている。学科は物理学科で当たり障りない大学生活を送っている。
もうほとんど記憶からは消えているけれど、克と初めて会ったのは2年前の飲み会、俗に言う合コンでだった。私はまったくそういうことには興味がなかったのだけど、飲み会に行かないかと友達が誘ってくれたので特に予定もなく断る理由がなかったので連れて行ってもらった。そしたらば、社会人との合コンがセッティングされていたのだ。最初に挨拶をしたきりひとりで飲み続け食べ続けていた私に声をかけたのが克だった。本人が言うには、そのときに残りの人生の勇気を使い切ってしまったらしい。
「心石(こころいし)さん、あまりしゃべらないね」
「・・・・・・・・・・はあ」
「俺もこういうとこ苦手なんだ」
それを皮切りに、克は天気の話やら私の地元はどこかという話やらどうして今の大学にしたのかということやら同じような当たり障りない話題を繰り返し話した。私は聞かれたことにだけは答えていたが、始終、はあ、とか、ええまあ、とか愛想のない相槌ばかりしていた。だけれども、克のほうはとても楽しそうなというよりうれしそうな表情をしているのが見て取れた。何がそんなに楽しいのだろうと思っていたが、訊くまでには及ばなかった。
テーマ:恋愛小説 - ジャンル:小説・文学
2008.06.16 |
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そこへ流し込んだ唾液
君のものでもいいよ
流石に目薬を飲めやしないから
口が寂しいのなら退屈な雲でもあげようか
勝ち誇る太陽って憎たらしいんだ
見え透いた大衆も同じくらい
捻くれた螺子回しとかさ
使えないだろ?
語りかける朝ってのも鬱陶しい
飽くなき絶望へ背中が希望で満ちてるって教えられたら
卒倒するかな
臨海で待ってる
殺気立った夕日がこっち見てる
ごめん気のせいだった
テーマ:詩・想 - ジャンル:小説・文学
2008.06.13 |
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灼熱の辺に身を寄せて
じわじわと皮膚が爛れ
肉の焼ける臭気の立ち込める
そんぐらいにしといたら?
骨も溶けるよ
2008.05.25 |
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僕がつけた傷痕がほしいならおいで
僕がつけた傷痕受け止められるならおいで
すこし不敵な笑みで君を出迎えて
ふかふかなソファに腰を据えて
スプリングが楽しいベッドでキモチイイことしよう
お互いくすくす嗤い合って
ふんわり匂う君の髪の毛のにおいに釣られて僕はくちづける
ソファみたいにふかふかな君に乗っかって
高揚させられる気分を放り投げておくれ
ソファはつめたいけれど君はあたたかい
ときどき猫も加わってみんなで楽しい時間を過ごそう
僕がつけた傷痕がほしいならおいで
僕がつけた傷痕受け止められるならおいで
そうじゃないなら
それができないなら・・・
テーマ:詩 - ジャンル:小説・文学
2008.05.24 |
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